ご家族が亡くなられると、葬儀や役所への届出をはじめ、相続財産の調査、相続人の確認、遺産分割、相続税申告など、さまざまな手続きが必要になります。
「相続が発生したら何から始めればいい?」
「相続税の申告期限はいつ?」
「3か月、4か月、10か月という期限は何のこと?」
初めて相続を経験する方にとって、相続発生後の手続きはわからないことも多いでしょう。
特に注意したいのが、それぞれの手続きに期限があることです。
相続発生後は、3か月以内に相続放棄の申述、4か月以内に亡くなった方の準確定申告、そして10か月以内に相続税の申告・納税を行う必要があります。
今回は、相続発生後から相続税申告・納税までの流れについて、期限とともにわかりやすく解説します。
目次
相続発生後から相続税申告までの全体的な流れ
まずは、相続が発生してから相続税申告までの流れを確認してみましょう。

相続税の申告・納税期限は、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。
例えば、令和8年4月1日に亡くなった場合、令和9年2月1日までに、相続税の申告・納税をする必要があります。

10か月というと時間に余裕があるように感じるかもしれませんが、相続発生後にはさまざまな手続きを順番に進める必要があります。
まず、相続財産の調査や法定相続人の確定、遺言書の有無を確認し、必要に応じて3か月以内に相続放棄の申述を行います。さらに、亡くなった方について確定申告が必要な場合には、4か月以内に準確定申告を行います。
その後、土地や建物を含む相続財産の調査・評価を進め、相続人同士で遺産分割について話し合い、相続税額を計算したうえで、10か月以内に相続税の申告・納税を行います。
このように、相続税申告は申告書だけを作成すればよいものではありません。相続人の確定、財産の調査・評価、遺産分割など、いくつもの手続きを積み重ねた先に相続税申告があります。
特に遺産分割に時間がかかったり、土地など評価に時間を要する財産があったりすると、10か月は決して長い期間ではありません。申告期限直前になって慌てないためにも、相続が発生したら10か月の期限から逆算し、できるだけ早めに準備を始めることが大切です。
ここからは、相続発生後に必要となる手続きを、期限ごとに順を追って確認していきます。
相続発生から3か月以内に行うこと
相続が発生してから最初の3か月は、その後の相続手続きを進めるための重要な期間です。
死亡にかかわる一般的な手続きだけでなく、相続財産や相続人の確認、遺言書の有無などを調べていきます。
死亡にかかわる一般的な手続きを行う
ご家族が亡くなられた直後は、まず死亡にかかわる一般的な手続きを進めます。
この時期は葬儀なども重なり、ご家族にとって非常に慌ただしい時期です。
相続税申告についてすぐにすべてを調べる必要はありませんが、少し落ち着いた段階で、亡くなった方の財産に関係しそうな資料をまとめておくと、その後の手続きを進めやすくなります。
公共料金の名義変更や解約を行う
電気・ガス・水道など、亡くなった方の名義になっている公共料金について、必要に応じて名義変更や解約を進めます。
相続発生後には税金や財産に関する手続きだけでなく、亡くなった方が契約していたものについても整理していく必要があります。
相続財産を調査する
続いて、亡くなった方がどのような財産を所有していたのかを調査します。
預貯金だけでなく、土地・建物、有価証券など、相続財産全体を確認していきます。
また、プラスの財産だけでなく、借入金などがないかについても確認することが重要です。
財産の状況を把握することは、相続税申告が必要かどうかを判断するだけでなく、相続放棄を検討するうえでも重要になります。
法定相続人を確定する
財産調査と並行して、誰が法定相続人になるのかを確認します。
相続人の確定は、遺産分割を行うために必要なのはもちろん、相続税を計算するうえでも重要です。
相続税の基礎控除額は、
3,000万円+600万円×法定相続人の数
によって計算するため、法定相続人が何人いるのかによって基礎控除額も変わります。
遺言書の有無を確認する
相続が発生したら、亡くなった方が遺言書を残していないか確認しましょう。
遺言書がある場合には、その内容がその後の相続手続きや財産の分け方に大きく関係します。
特に、自宅などで保管されていた自筆証書遺言を発見した場合には注意が必要です。
自筆証書遺言のうち、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用していないものについては、原則として家庭裁判所で「検認」の手続きが必要です。
検認とは、遺言書の状態や内容を確認し、その後の偽造・変造を防止するための手続きです。
なお、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用して保管されている遺言書については、家庭裁判所での検認は不要です。
遺言書を見つけた場合には、すぐに相続人だけで手続きを進めるのではなく、まず遺言書の種類や保管方法を確認しましょう。
また、封印のある遺言書は家庭裁判所で相続人等の立会いのもと開封する必要があるため、自己判断で開封しないよう注意が必要です。
3か月以内に相続放棄を検討する
3か月以内の手続きの中で、特に期限に注意したいのが相続放棄の申述です。
亡くなった方の財産を調査した結果、借入金などがあり、相続放棄を検討する場合もあります。
そのため、3か月の期限が近づいてから財産を調べ始めるのではなく、できるだけ早い段階で財産の状況を確認しておくことが大切です。
相続発生から4か月以内に行うこと
3か月以内の手続きを進めた後、次に意識したいのが4か月以内の期限です。
この期間で重要になるのが、亡くなった方の準確定申告です。
亡くなった方の準確定申告を行う
亡くなった方について確定申告が必要な場合には、相続人が準確定申告を行います。
相続税の申告と準確定申告は別の手続きです。
相続税申告は10か月以内ですが、準確定申告はそれよりも早く期限を迎えます。
そのため、
「相続税申告まで10か月あるから、まだ急がなくても大丈夫」
と考えていると、準確定申告の対応が遅れてしまう可能性があります。
相続発生後は、相続税がかかるかどうかだけではなく、亡くなった方について準確定申告が必要なのかについても確認しておきましょう。
相続発生から10か月以内に行うこと
相続税申告において、最も重要な期限の一つが10か月です。
10か月以内には、遺産分割について話し合い、必要な手続きを進めたうえで、相続税の申告・納税を行います。
相続税申告に向けて財産を評価する
相続税を計算するためには、相続財産の金額を確認する必要があります。
特に土地などの不動産がある場合には、相続税上の評価が必要となるため、預貯金だけの相続と比べて時間がかかることがあります。
相続税申告が必要かどうかについては、相続財産の調査と評価を行い、基礎控除額などと照らし合わせて判断していきます。
また、遺産の分け方によって相続税額が変わる場合もあるため、相続税が発生する可能性がある場合には、遺産分割を決める前に税額を確認しておくことも大切です。
遺産分割協議を行う
相続人と相続財産を確認したら、誰がどの財産を相続するのかについて相続人同士で話し合います。
これが遺産分割協議です。
例えば、
「自宅は配偶者が相続する」
「預貯金は子どもが相続する」
など、具体的な財産の分け方を決めていきます。
相続税申告において、遺産分割は税額にも大きく関係します。
例えば、相続税には一定の要件を満たすことで利用できる「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」があります。
これらは相続税の負担を大きく軽減できる可能性がある制度ですが、申告期限までに遺産分割が終わっていない場合、原則としてその時点では適用することができません。
その場合でも、相続税の申告期限そのものが延びるわけではないため、いったん未分割の状態で相続税を申告・納税する必要があります。
その際、一定の手続きを行っておき、その後に遺産分割が成立して所定の要件を満たせば、更正の請求などの手続きを行うことで、特例の適用を受けられる場合があります。
ただし、後から改めて手続きを行うことになるため、相続人にとっても手間や負担が増えてしまいます。
そのため、できる限り10か月の相続税申告期限までに遺産分割をまとめ、特例を適用した状態で相続税申告を行えるよう、早めに話し合いを始めることが大切です。
特に、
- 相続人が複数いる
- 不動産が多い
- 誰がどの財産を取得するか決まっていない
- 配偶者の税額軽減を利用したい
- 小規模宅地等の特例を利用できる可能性がある
といった場合には、申告期限直前になってから遺産分割を始めるのではなく、余裕を持って進めましょう。
遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議によって相続人全員の合意がまとまったら、その内容を遺産分割協議書として作成します。
遺産分割協議書には、誰がどの財産を取得するのかを記載します。
その後の銀行口座の解約や、不動産の名義変更手続きなどにも関係する重要な書類となるため、内容を確認しながら正確に作成します。
10か月以内に相続税の申告・納税を行う
相続税申告が必要な場合には、期限までに相続税の申告と納税を行います。
10か月と聞くと長く感じるかもしれません。
しかし、その間には相続財産の調査、相続人の確定、遺言書の確認、準確定申告、遺産分割協議、相続税申告の準備など、さまざまな手続きがあります。
そのため、相続税申告は期限から逆算して早めに準備することが重要です。
遺産分割後|相続財産の名義変更を順次行う
遺産分割後は、その内容に基づいて相続財産の名義変更を順次進めます。
相続財産にはさまざまな種類があり、それぞれ必要となる手続きも異なります。
相続税を申告・納税しただけですべての相続手続きが終了するわけではないため、遺産分割後の名義変更についても忘れずに進めましょう。
特に不動産の名義変更については、相続登記が義務化されています。原則として、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。
相続税申告は早めの準備が大切
相続税申告の期限は10か月ですが、その前にも3か月・4か月という重要な区切りがあります。
特に、
- 相続財産がどのくらいあるかわからない
- 土地などの不動産がある
- 借入金があるかもしれない
- 相続人が複数いる
- 遺産の分け方が決まっていない
- 相続税がかかるかわからない
といった場合には、早めに準備を始めることが大切です。
「必要書類がすべてそろってから相談しよう」と考える必要はありません。
何から始めればいいかわからない段階で専門家に相談することで、3か月・4か月・10か月という期限から逆算して、必要な手続きを整理しやすくなります。
相続税申告をご検討の方へ
相続が発生すると、ご家族は短期間のうちにさまざまな手続きを行うことになります。
特に相続税申告が必要な場合には、財産調査や財産評価、遺産分割などを進めたうえで、10か月以内に申告・納税まで行わなければなりません。
「相続税がかかるのかわからない」
「相続発生後、何から始めればいいかわからない」
「相続税申告の期限に間に合うか不安」
このようなお悩みがある場合には、早めに相続税に詳しい税理士へ相談することをおすすめします。
まとめ|「3か月・4か月・10か月」を覚えておきましょう
相続発生後から相続税申告までの流れを把握する際には、まず3か月・4か月・10か月という3つの期間を押さえておきましょう。
3か月以内には、死亡にかかわる一般的な手続きや公共料金の名義変更・解約、相続財産の調査、法定相続人の確定、遺言書の確認などを進め、必要に応じて相続放棄の申述を行います。
4か月以内には、亡くなった方について必要となる準確定申告を行います。
そして10か月以内には、遺産分割協議や遺産分割協議書の作成などを進め、相続税の申告・納税を行います。
その後、遺産分割の内容に従って、相続財産の名義変更を順次進めていきます。
相続が発生してから10か月という期間は、決して長くありません。相続税申告が必要かわからない場合も含め、早めに全体のスケジュールを確認し、余裕を持って手続きを進めることが大切です。

