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コラム
2026.11.02

遺言書がないと困る人は意外と多い!必要な人・ない場合の困りごと・作成のポイントを解説

「遺言書は財産がたくさんある人が作るもの」

「うちは家族仲が良いから、遺言書までは必要ない」

「まだ元気だから、もう少し先で考えればいい」

このように思っている方も多いのではないでしょうか。

しかし、遺言書は一部の資産家だけが作るものではありません。

自宅などの不動産を所有している方、お子様がいない方、相続人以外の方に財産を残したい方、

相続人の中に認知症などで判断能力に不安のある方がいる場合など、

遺言書を作成しておいた方がよいケースは意外と多くあります。

遺言書の大きな役割は、

「自分の希望を伝えること」 そして、

「遺された家族が困らないようにすること」です。

遺言書は「亡くなるための準備」ではありません。

元気なうちに、ご自身の想いと財産をどのように次の世代へ引き継ぐのかを考える、

家族のための準備です。

今回は、遺言書とは何か、遺言書がある場合とない場合で相続手続きがどう違うのか、

遺言書がないとどのようなことに困る可能性があるのか、

作成するメリットや注意点までわかりやすく解説します。

遺言書とは?

遺言書とは、

「自分が亡くなった後、財産を誰に・どのように引き継いでもらいたいか」

を残しておく法的な文書です。

たとえば、

  • 自宅は妻に相続してもらいたい 
  • 預貯金は長男と長女に半分ずつ残したい 
  • アパートは事業を引き継ぐ長男に相続してもらいたい
  • 相続人ではないけれど、お世話になった方にも財産を残したい 

といった希望を形にすることができます。

つまり遺言書は、単なる財産分けの書類ではありません。

「誰に・何を・どのように残したいのか」

というご自身の意思を、ご家族へ明確に伝えるためのものです。

遺言書がある場合とない場合では、相続手続きはどう違う?

遺言書を作成する大きな意味の一つが、

相続が発生した後の家族の手続きを簡単にできる可能性があることです。  

遺言書がない場合に重要なのは、

原則として相続人全員で「誰が何を取得するのか」を決めなければならないことです。

これを「遺産分割協議」といいます。

一方、適切な遺言書があり、誰がどの財産を取得するのかが決められている場合には、

基本的には遺言書の内容に沿って手続きを進めます。

つまり、財産の取得者が遺言書によってきちんと決められていれば、

その財産について相続人全員で一から分け方を話し合う必要がなくなります。

遺言書がないと何に困る?

遺言書がないからといって、必ず相続でもめるわけではありません。

しかし実務上は、遺言書がないことで

「争ってはいないのに、相続手続きが進まない」ということもあります。

具体的にどのようなことに困るのでしょうか。

相続人全員の合意が必要になる

遺言書がなければ、原則として相続人全員で遺産分割協議を行います。

「自宅は長男が取得する」

「預金は兄弟で半分ずつ分ける」

といった内容について、全員の意思を確認し、合意しなければなりません。

家族仲が良くても、それぞれの生活状況や経済状況によって希望が異なることはあります。

また、普段ほとんど付き合いのない相続人がいる場合などには、連絡を取り、

協議を進めること自体が負担になることもあります。

相続の問題は、決して一部の資産家だけに起きるものではありません。

相続人が認知症だと遺産分割協議ができないことがある

特に注意していただきたいのが、

相続人の中に認知症などで十分な判断能力がない方がいる場合です。

遺産分割協議は、相続人一人ひとりが内容を理解し、自分の意思で合意する必要があります。

そのため、

「家族だから、子どもがお母さんの代わりに決めればよい」

ということはできません。

相続人の判断能力が十分でなく、遺産分割協議ができない場合には、

成年後見制度の利用などを検討しなければならないこともあります。

しかし、成年後見制度は家族の希望どおりに自由に財産を分けるための制度ではありません。

後見人は本人の財産を守る立場にあるため、

家族にとって都合のよい分け方が認められるとは限らず、

申立ての手続きや、専門職後見人が選任された場合の報酬などが必要になる場合もあります。

そのため、相続が起こったときに残された配偶者も

元気であるとは限らないという視点は非常に大切です。

ご夫婦の場合には、夫だけ、妻だけではなく、

夫婦それぞれが遺言書を検討するという考え方も必要になります。

預貯金や不動産の手続きが思うように進まないことがある

遺産分割協議ができなければ、

相続財産について希望どおりの手続きを進められないことがあります。

たとえば、

  • 預貯金の相続手続きが進まない
  • 不動産を希望する人の単独名義にできない
  • 不動産が共有状態になる
  • 相続した不動産を売却したいのに進められない

といった問題につながる可能性があります。

特に自宅や土地、アパートなどの不動産は、現金のように簡単に分けることができません。

不動産を所有している方は、元気なうちから

「この不動産を誰に引き継いでもらいたいのか」を考えておくことが重要です。

相続税の特例にも影響する場合がある

相続税がかかる方の場合、

遺産分割が決まっていないことで税務上の問題が生じることもあります。

代表的なのが、 【小規模宅地等の特例】 や、 【配偶者の税額軽減】 です。

これらは、誰がどの財産を取得するのかが重要になる制度です。

相続税の申告期限までに遺産分割が決まっていなければ、

当初の申告時には適用できない場合があります。

一定の手続きをしたうえで、後から分割が成立した場合に特例を適用できることもありますが、

最初から分割が決まっている場合に比べれば、手続きは複雑になります。

したがって、相続税がかかる可能性がある方は、遺言書を作成するときに

「誰に残したいか」だけでなく、

「その分け方をした場合、相続税がどうなるか」まで確認しておくことをおすすめします。

遺言書でできることは財産の分け方だけではない

遺言書では、「自宅を妻に相続させる」といった財産の分け方以外にも、

さまざまなことを定めることができます。

主なものには、次のようなものがあります。

  • 1. 相続分の指定

法定相続分とは異なる割合で相続させることができます。

  • 2. 遺産分割方法の指定

「自宅は長男、預貯金は長女」のように、誰がどの財産を取得するかを指定できます。

  • 3. 一定期間の遺産分割の禁止

法律上認められた範囲内で、一定期間、遺産分割をしないよう指定することができます。

  • 4. 遺贈

相続人ではない方へ財産を残すことができます。

  • 5. 子どもの認知
  • 6. 相続人の廃除・廃除の取消し
  • 7. 遺言執行者の指定
  • 8. 未成年後見人の指定
  • 9. 祭祀承継者の指定
  • 10. 公益団体などへの寄付
  • 11. 生命保険金の受取人の変更

などがあります。

全部を覚えておく必要はありません。

一番大切なのは、

「誰に・何を・どのように残すのかについて、自分の意思を形にできる」ということです。

遺言書を作成する4つのメリット

遺言書を作成するメリットは、大きく4つあります。

  • 1.自分の意思で遺産の分け方を決められる

「自宅は妻に残したい」

「賃貸不動産は管理をしている長男に引き継いでもらいたい」 など、

ご自身の希望を遺言書に残すことができます。

法定相続分とは異なる割合を指定することも可能です。

  • 2.相続トラブルの予防につながる

誰が何を相続するのかが明確になっていれば、

その財産について遺産分割協議をする必要がなくなります。

相続人が一から分け方を考える必要がなくなるため、

意見の違いが生じる場面を減らすことにもつながります。

  •  3.相続人ではない人にも財産を残せる

たとえば、

「内縁の妻・夫 」

「長年介護をしてくれた子どもの配偶者」

「お世話になった方」

「公益団体」  など、

法定相続人ではない方にも、遺言によって財産を遺贈することができます。

「お世話になったから財産を渡したい」

と心の中で考えているだけでは、その希望が実現するとは限りません。

意思を実現したい場合には、【遺言書】という形にしておくことが大切です。

  •  4.残された家族の負担を減らせる

適切な遺言書があれば、遺産分割協議を省略できる財産が増え、

必要となる書類や手続きの負担を軽減できる場合があります。

さらに、【遺言執行者】を指定しておくことで、

遺言内容を実現するための手続きを誰が行うのかも決めておくことができます。

遺言書は、ご自身のためだけでなく、相続手続きを行う家族のための準備でもあるのです。

どのような人は遺言書を作っておいた方がよい?

遺言書が必要かどうかを、「財産がいくらあるか」だけで判断するのはおすすめしません。

家族構成や財産の内容、ご本人の希望によって必要性は変わります。

特に次のような方は、一度検討してみるとよいでしょう。

「自宅、土地、アパートなど、分けにくい不動産を所有している 」

「お子様がいない」

「相続人の人数が多い」

「前婚のお子様がいる」

「相続人同士が疎遠になっている」

「特定のお子様に自宅や事業用財産を引き継いでもらいたい」

「内縁の配偶者など、相続人ではない方に財産を残したい」

「相続人の中に認知症などで判断能力に不安のある方がいる」

「相続発生後の家族の手続きをできるだけ簡単にしたい」

「相続税まで考慮したうえで財産の取得者を決めておきたい」

つまり、遺言書は

「財産が多い人に必要なのではなく、

亡くなった後の財産の行き先について自分の希望がある人にとって必要性が高いもの」

と考えると分かりやすいでしょう。

自筆証書遺言と公正証書遺言はどう違う?

代表的な遺言書には、【自筆証書遺言】と【公正証書遺言】があります。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、ご本人が作成する遺言書です。

メリットは、

  • 自分で作成できる
  • 費用を抑えられる
  • 作り直しが比較的簡単
  • 誰にも知られず作成することもできる

といった点です。

一方で、

  • 法律上の方式を満たさず無効になる可能性がある
  • 自宅保管の場合、紛失する可能性がある
  • 発見されない可能性がある
  • 改ざんや隠匿などのリスクがある

といった点には注意が必要です。

なお、自筆証書遺言については、

法務局で保管してもらう【自筆証書遺言書保管制度】もあります。

通常、自宅などで保管していた自筆証書遺言は家庭裁判所での検認が必要ですが、

法務局の保管制度を利用している場合は検認が不要です。

 

公正証書遺言 

公正証書遺言は、公証人が作成する遺言書です。

原本が公証役場に保管されるため、

  • 形式上の不備によって無効になる可能性が低い
  • 紛失の心配が少ない
  • 偽造・隠匿などのリスクを抑えられる
  • 家庭裁判所での検認が不要
  • 遺言者の意思を公証人が確認する

といったメリットがあります。

一方で、公証役場での手続きや証人の立会いが必要で、

財産額等に応じた費用もかかります。

資料でも、自筆証書遺言と公正証書遺言をこのように比較し、

確実性を重視する場合には公正証書遺言を勧めています。

せっかく遺言書を作っても、相続が発生したときに有効に使えなければ、

ご本人の希望を実現することができません。

そのため当事務所では、確実性を重視する場合には公正証書遺言をおすすめしています。

遺言書を作成するときの4つのポイント

遺言書は、ただ書けばよいというものではありません。

作成する際には、次の4点を意識しましょう。

  • 「誰に・何を・どのくらい」残すのかを明確にする

まずは、ご自身の財産を整理し、

誰に、どの財産を、どの程度残したいのか を考えます。

不動産や預貯金など、それぞれの財産について具体的に整理することが重要です。

  • できるだけすべての財産について決めておく

意外と見落とされやすいのが、この点です。

たとえば、自宅についてだけ遺言書を書いていても、

預貯金について何も書かれていなければ、

その預貯金について改めて遺産分割協議が必要になる場合があります。

そのため、遺言書を作成する際には、

できるだけ財産全体について取得者を決めておくことが大切です。

  • 遺言執行者を決めておく

遺言執行者とは、遺言書に記載された内容を実現するために、

相続発生後の手続きを行う人です。

遺言執行者をあらかじめ指定しておくことで、

その後の手続きを進めやすくなる場合があります。

  • 遺留分に配慮する

遺言書では自由に財産の取得者を決めることができますが、

一定の相続人には遺留分があります。

特定の方だけに多くの財産を残す内容にすると、

相続後に遺留分をめぐる問題が生じる可能性もあります。

せっかく家族のために作った遺言書が、

新たな問題の原因にならないようにすることも重要です。

これらのポイントは、セミナー資料でも遺言書作成時の注意点として挙げています。

遺言書はいつ作ればよい?

結論からいうと、「まだ早い」と思っている元気なときこそ、遺言書を考えるタイミングです。

遺言書を作成するためには、ご本人が遺言の内容を理解し、

自分の意思で判断できる状態であることが必要です。

認知症になったからといって直ちに遺言書を作成できなくなるわけではありませんが、

認知機能が低下し、遺言をするために必要な能力が認められない状態になれば、

有効な遺言書を作成することができません。

また、人生の後半になるほど、

ご本人だけでなく配偶者の判断能力についても考えておく必要があります。

そのため、「何かあったら考えよう」ではなく、

「元気だからこそ今考える」ということが大切です。

相続税がかかる可能性がある人は、遺言書と税金を一緒に考える

遺言書を作成するときには、ご本人の希望だけでなく、

税金のことも確認しておくことをおすすめします。

相続税は、「誰がどの財産を取得するか」によって変わる場合があります。

たとえば、

  • 配偶者の税額軽減 – 小規模宅地等の特例
  • 二次相続時の相続税

などを考慮すると、

同じ財産総額でも分け方によってご家族全体の税負担が変わることがあります。

そのため、相続税が発生する可能性がある方については、

財産を整理する → 相続税を試算する

→ 遺産の分け方をシミュレーションする → 遺言書の内容を決める

という流れで検討すると安心です。

「自分の想いを実現できる分け方」

「税務上も無理のない分け方」

「各相続人の納税資金も考慮する」

ことを確認したうえで遺言書を作成することが重要です。

遺言書についてよくある質問

  • 遺言書があれば、必ず遺産分割協議をしなくてよいですか?

すべての財産について取得者が適切に指定され、その遺言書に沿って相続する場合には、

基本的にその財産について遺産分割協議を行う必要はありません。

ただし、遺言書に記載されていない財産が残っている場合には、

その財産について遺産分割協議が必要になることがあります。

そのため、財産の一部だけではなく、できるだけ財産全体について記載することが重要です。

  • 家族仲が良ければ遺言書は必要ありませんか?

家族仲が良いから不要とは限りません。

遺産分割協議が進まない原因は、「争い」だけではないからです。

相続人の中に認知症の方がいる、相続人が遠方に住んでいる、相続人の人数が多いなど、

誰も争っていなくても手続きが進みにくくなることがあります。

  • 夫婦の場合、どちらか一人が遺言を書けば十分ですか?

どちらが先に亡くなるかは分かりません。

また、相続が発生した時点で残された配偶者が健康で、十分な判断能力があるとも限りません。

そのため、ご夫婦の場合には、

それぞれの財産について夫婦双方が遺言書を検討することをおすすめします。

  • 遺言書は一度作ったら変更できませんか?

いいえ。

家族構成、財産内容、ご自身の考え方が変われば、遺言書を見直すことができます。

不動産を売却した場合や、財産内容が大きく変化した場合などには、

以前作った遺言書が現在の状況に合っているか確認するとよいでしょう。

まとめ|遺言書は「遺された家族のため」の準備

遺言書は、財産が多い一部の方だけが作るものではありません。

遺言書がない場合には、

「相続人全員で遺産分割協議をする必要がある。」

「相続人に認知症などで判断能力が十分でない方がいると、

話し合いを進められないことがある。」

「預貯金や不動産の相続手続きが思うように進まないことがある。」

「相続人ではない大切な方には、そのままでは財産を残せない。」

「相続税の特例にも影響する場合がある。」

といったことが考えられます。

一方、元気なうちに適切な遺言書を作成しておけば、

自分の希望を残し、家族が相続で困る可能性を減らすことができます。

遺言書は「亡くなる準備」ではありません。

大切な想いと財産を、ご家族が安心して受け継ぐための準備です。

「まだ早い」と思っている元気な今だからこそ、 誰に、何を、どのように残したいのか。

一度考えてみてはいかがでしょうか。

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